ダービーでの勝利にこだわった背番号7
だが、そんな試合の均衡はあっけない形で崩れる。しかも実態は、トリノの自爆によって引き起こされたようなものだった。それが、67分にPKを献上した際のエピソードだ。
攻撃の閉塞感を解消しようと、後方からオーバーラップをしかけたのはCBのレオナルド・ボヌッチ。その彼には、トリノのFWの一角であるシモーネ・ザザが下がってボールを奪いにきた。裏まで走って回り込み、ボヌッチからボールを奪うようにしてキープする。すると、焦った挙句GKに対し不用意なパスを出した。
そこに目ざとく詰めてきたのはマンジュキッチ。この飛び出しに焦ったイチャソは、タックルをかけて倒してしまう。そして、トリノにはPKが宣告された。
「エピソードで決まってしまった」とマッツァーリ監督は嘆いた。しかし肝心なのは、失点の後だ。先制に成功したユーベはペースを上げてトリノを押し込み、逆に運動量の落ちたトリノの選手たちは相手に押されてしまった。
PKをもぎ取ったのはハードワークを得意とするマンジュキッチだったことも象徴的で、最終的にユーベはプレーの強度でトリノを凌駕した。
さてPKを決めたC・ロナウドは、得点後になぜかGKのところに当たりに行き、反スポーツマンシップ的行為とみなされてイエローカードを喰らっている。行為自体は決して褒められたものではない。だがチームに溶け込み、ダービーでの勝利にこだわっていたことの証と解釈することも可能だろう。
「何日か前にスタッフの一人に言われたんだ。『お願いだからトリノには勝ってくれ、さもないとうちのおばあちゃんが…』ってね。ユベントスのファンには負けの許されない試合が2試合あるということも分かった。インテルとの試合と、トリノとのダービーマッチだ」。10日付のガゼッタ・デッロ・スポルトのインタビューで、彼はこんなことも語っていたのだ。
(文:神尾光臣【イタリア】)
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