新潟での挫折、いわきで受けたカルチャーショック
卒業後の進路をどうするべきか。思いを巡らせているときに、アルビレックス新潟U-18のフィジカルコーチからいわきFCを勧められた。当時はJ1から数えて7部に当たる、福島県社会人リーグ1部を戦っていたいわきFCの練習に参加したランディは、ちょっとしたカルチャーショックを受けている。
昨夏に開場した日本スポーツ界初の商業施設複合型クラブハウス『いわきFCパーク』の2階には、親会社の株式会社ドーム(本社・東京都江東区、安田秀一代表取締役CEO)が運営するトレーニングジム、ドームアスリートハウスいわきがテナントとして入居。最新鋭のトレーニング機器がそろっていた。
「クラブの施設に驚きました。本当に環境が整っているし、自分がこの環境を上手く使っていけば、間違いなく成長できると。筋力トレーニングを始めたのが高校3年生になってからで、しかも自己流でやってきたんですけど、知識が増えてくるだけでも全然違ってきますよね。自分の体のことを知ったうえで、いまはここが足りないと意識しながらトレーニングすることができると思ったので」
ランディが練習参加していた最終日の昨年9月2日には、偶然にもアルビレックスとの練習試合が組まれた。いわきFCのフォワードとして先発したランディへ、田村雄三監督はこんな言葉をかけている。
「お前、新潟にムカついているだろう。何でトップチームに上げないんだ、と思っているだろう」
驚いた表情を浮かべたランディは「ムカついてはいなんですけど、ちょっと残念でした」と返してきた。すかさず田村監督が、まるで諭すかのように檄を飛ばした。
「残念うんぬんではなくて、ムカつけ。いまからでも遅くない、と新潟に考え直させるくらいのプレーを見せてみろ」
試合そのものは、いわきFCが0-4の完敗を喫した。しかし、試合後の田村監督のもとには「ランディ、すごくいいじゃないか」というアルビレックス関係者の声が届いていた。発奮したことで実力が引き出された形だが、素朴な疑問が残る。キックオフの直前に、18歳の少年を焚きつけたのはなぜなのか。