来年も…。中村俊輔は走り続ける
厚い信頼関係は、そのまま来季へと紡がれてくことを予感させる。だからこそ、契約延長は白紙としながらも、俊輔は来季の磐田が歩むべき道を早くも思い描いていた。
「個の力や自由さ、楽しさを追求するのも大事だけど、たとえばビルドアップの部分などでも、緻密な戦術といったものが個を引き出し、助ける形にいまはなっている。来年は外国人(外国籍選手枠)が5人になるんだっけ? Jリーグがガラッと変わっちゃってどうなるかわからないけど、クラブもスタッフも選手もそういうスピードについていかないと、今年みたいな結果を招いちゃう。一歩先を進みながらプラス、ジュビロらしさみたいなものがあれば。今年苦しんだことは、来年はね上がるいい材料になる」
冒頭で記した川口からの電話におけるやり取りを、ちょっとだけ記す。恐縮しながら「忘年会でちゃんとお話します」と伝えた俊輔に対して、スマートフォン越しに「いろいろと厳しいと思うけど、頑張れよ」という言葉が返ってきた。多くは語らなくても、川口は現役続行を臨む俊輔の胸中を見透かしていた。
「すごいよね。さすが器が違うな、と思いました」
笑顔を浮かべながら、俊輔はヤマハスタジアムを後にした。この瞬間からサッカー人生の現役の章を締めくくる、20世紀から追ってきた川口の眩しい背中との距離を縮める俊輔の最後の戦いが始まった。
(取材・文:藤江直人)
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