肝の据わった21歳
試合開始から磐田が勢いよくプレスをかけ、相手のビルドアップを規制する。今季のJ1では縦パスをつけられ、加速を許すとラインを下げるしかなかった。しかし、東京Vは丁寧に繋いでくるチームだったため、磐田は前向きにアプローチすることができた。名波浩監督も「特にヴェルディはボランチで時間を作ったり、横パスを1本ではなく2、3本入れる。こちらが戻る時間ができたので、大きく破綻しなかった」と振り返っている。
そして、この日は磐田も落ち着いてボールを動かし、攻撃を加速させている。先制のPKに繋がる攻撃がまさにそうだった。前半38分、後ろの繋ぎで隙をうかがうと今度は相手が食いついてきた。
右CBの大南拓磨が持った瞬間、佐藤優平が寄せてくる。しかし、周りが付いてこない。大南のパスを受けた右SB小川大貴はダイレクトで前につけると、大久保嘉人を経由し山田大記がスルーパスを通す。後手の対応でマークがズレる東京Vを尻目に、小川航がスペースに走り込むと、GKと交錯しPKを手にした。
スポットに立ったストライカーは、上福元直人の守るゴールを見据えるとゴール左へ蹴り込んだ。ネットが揺れるのを確認し、歓喜するベンチへ一目散に駆けて行った。
80分には田口泰士が直接FKを決め、J1残留をぐっと引き寄せた。ファウルを受けたのは小川航だった。完勝と言えるゲームで、背番号18は相手の脅威となった
「大一番は“美味しい”」
小川航はこう述べた。肝の据わった21歳の一面だろう。ではチームメイトは、大きな仕事をやってのけた彼をどう見ていたのだろうか。
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