サポーターが渇望したタイトルへ
仙台はもう、J1残留で良し、カップ戦で少しでも上に行ければ良しというようなクラブではない。渡邉監督が話した通り、ACLに出場した歴史、天皇杯準優勝という成績がある限りは、もう一度、あるいはその上を狙うしかない。「その上」とはすなわちタイトルの獲得だ。今回の敗戦で、選手の栄冠への思いがより一層強くなったのは間違いない。リーグ王者の川崎フロンターレ、アジア王者の鹿島アントラーズ、天皇杯王者の浦和。これらの3クラブのような実力がないにしても、一度味わった悔しさは選手を強くし、いつも以上の力を引き出せる時が訪れる。
「まだ早い」。周りの人間からすれば、これが本音なのかもしれない。しかし、仙台のサポーターはタイトルを心待ちにしているはずだ。道のりは決して簡単ではないが、「また天皇杯の決勝に立って今度こそ勝ちたい」とシュミットが話した通り、選手の気持ちはすでに高まっている。2019シーズン開幕まではまだ時間があるが、浦和がカップを掲げる瞬間をピッチから眺めていた仙台の選手たちは、その光景を瞼にしっかりと焼き付け、「次こそは」という思いを来季の舞台に持っていくはずだ。そういった意味で天皇杯準優勝は意味のないものにはならなかった。次なる時代への幕開けとなったのではないだろうか。
勝負の2019シーズンは渡邉監督が仙台を率いて6年目に突入する。まずはもう一度高みへ。同指揮官は「多少背伸びしている部分はある」としながらも「それを実現してこそ男」と力強く話した。
「今度こそは、メダルなりカップなりを持って、この場に戻ってきたいと思います」。そう話した渡邉監督の眼はしっかりと来季を見据えていた。
(取材・文:小澤祐作)
【了】