あと一歩届かなかったタイトル
試合終了のホイッスルが鳴り響いた瞬間、黄色いユニフォームを身にまとった何人かの選手たちはピッチに倒れ込んだ。9日に行われた天皇杯決勝、対浦和レッズ戦。90分間、「優勝」の二文字だけを追い求めて、ベガルタ仙台のイレブン達は戦った。それでも、栄冠にはあと一歩届かなかった。
仙台にとって、難しいゲームであったことは試合開始前からわかっていた。相手は昨季のアジアチャンピオンにして、今季の明治安田生命J1リーグを5位で終えた強豪。各ポジションに日本代表経験者を揃え、ベンチに座るメンバーもまた、豪華だ。さらに、決勝戦の舞台は浦和の本拠地である埼玉スタジアム2002。この日も、スタジアムは真っ赤に染まり、大歓声が鳴り止むことはなかった。決勝戦にホーム、アウェイは普通なら関係ないが、仙台は「完全アウェイ」だったのである。
それでも、埼玉まで駆けつけたサポーターにタイトルを届けようと、仙台は前半から主導権を握り、浦和のゴール前までボールを運んでチャンスを作り出そうとした。天皇杯では3試合連続ゴール中だったジャーメイン良の速さ、強さを生かそうと、仙台は素早い縦パスを前線に供給。GKシュミット・ダニエルを含めた11人全員がしっかりとボールを繋ぎ、相手陣内へ押し込む。ボールを失っても、素早い切り替えでカウンターを許さない。試合の入りは、良かった。
ただ、シュートに持っていく直前のプレーで、チャンスをことごとく失ってしまっていた印象は否めない。クロスの質や、ラストパスの質は決して高くなかった。シュートは何本か放ったが、いずれも苦し紛れのものだった。