「タイトルを撮りたい」。指揮官の思いを受けて
クラブ側へ申し出た槙野を待っていたのは、オズワルド・オリヴェイラ監督との話し合いだった。7月11日には松本山雅FCとの天皇杯3回戦が迫っていた。
今年話題になった言葉に贈られる「現代用語の基礎知識選 2018ユーキャン新語・流行語大賞」に入選した『災害級の暑さ』が猛威を振るっていたなかで、オリヴェイラ監督は松本戦のピッチに立ってほしいと槙野に切り出した。
「この大会に勝ちたい、タイトルを獲りたいと監督から時間をかけてプレゼンテーションを受けました。それを受けて僕も休みを取らなかったですし、松本戦に出ることも決意しました。チームが来季のアジアの舞台に返り咲くためにも、この大会を何としても獲りたいという思いは僕としても強かったので」
果たして、敵地の松本平広域公園総合球技場で行われた一戦で、槙野は遠藤航とともに先発フル出場。試合は開始早々に先制されるも、マウリシオの2ゴールで逆転勝ちをもぎ取る。コーナーキックをヘディングで折り返し、42分の同点弾をアシストしたのは槙野だった。
西野ジャパンに選出された他のJリーグ勢を見れば、鹿島アントラーズの昌子源や植田直通、柏レイソルの中村航輔、セレッソ大阪の山口蛍、川崎フロンターレの大島僚太は天皇杯3回戦のピッチに立つどころか、ベンチにすら入っていない。オリヴェイラ監督の選手起用は、吉田をはじめとする海外組を再び驚かせたはずだ。しかし、槙野の胸中にも不退転の決意が芽生えていた。
昨季はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を勝ち抜いて実に10年ぶりに、日本勢としても2008シーズンのガンバ大阪以来、9年ぶりにアジアの頂点に立った。翻ってJ1では7位に終わり、天皇杯も4回戦で鹿島に屈したことで、今季のACL出場権を手にできなかった。