シティとのギャップ。影響をまともに受けるGK
横浜F・マリノスは12位でフィニッシュした。2018年の開幕戦、アンジェ・ポステコグルー新監督の下でヴェールを脱いだサッカーには驚きがあった。山中亮輔、松原健の両サイドバックが中央に寄る、いわゆる「偽サイドバック」はJリーグで見る新しい景色だった。
いってみればマンチェスター・シティのコピー。経営権を握ったシティ・グループが「シティ化」を進めている。戦術的なノウハウを提供する以上、横浜FMがシティと同じスタイルのサッカーを指向するのは当たり前なのかもしれない。ただ、そのまんまコピーするとは予想していなかった。
戦術の鉄則は選手を生かすことである。よく「戦術が選手を縛る」といわれるが、現実は反対で、戦術は常に選手に制限される。選手ができること以上の戦術は存在しない。選手のキャパシティが戦術を決める。なので、選手の能力を生かし切ることが戦術の肝になるわけだ。
その点で、横浜FMのシティ化は無理筋といえる。シティ化のメリットは、Jリーグでもシティと同じ魅力的で強いサッカーを披露できることだが、それには選手がシティと同レベルであることが条件になる。簡単にいえば、できないことをやろうとしている。ただ、プレースタイルを先に明示し、選手がそれに合わせていく中で伸びていく。日本代表にも選出された山中亮輔が好例だろう。シティに近づこうとする過程で、選手とチームの成長が促されるという強化方針なのだろう。
全36試合にフル出場した飯倉大樹は、走行距離7kmのGKとして話題になった。自陣から丁寧にパスをつないでいくシティ化にあたって、GKはビルドアップに組み込まれている。ハイラインの背後をカバーするスイーパーの役割もある。フィールドプレーヤー並の走行距離にならざるをえない。シティ化の影響をまともに受けるポジションだ。