相手選手は磐田の守備をどう見たのか
「こちらのビルドアップをすごく上手く“ぼかして”きた。効果的に前に進んで行けず、すごくやりにくかった。去年は遅れて、遅れて出てきていたイメージだったけど、今回はがっちりしていた。来るときはハメられて、来ないときは無駄に食いついたりしなくて、上手くスペースを消されて、なかなか間のスペースを取れなかった」
昨季の磐田は守備に手応えを得た上で結果も出した。そして、この選手の言葉は今季のもの。武器を使えない一方で、積み上げてきたものはバージョンアップされていたのではないか。
実際、前半戦最後の湘南ベルマーレ戦は敗れたものの、名波監督は「自力で21ポイント取ったこの自信というのは今後に繋がっていく。さらに高みに行けそうな気はする」と話している。
ロシアワールドカップによる中断期間でチームは[3-5-1-1]という新システムにトライした。中盤の[5]は1ボランチの形で、そこにはムサエフを配置する予定だったという。以前から温めてきた布陣であり、1月の鹿児島キャンプで名波監督からウズベキスタン人MFに直接伝えられた。就任時からアクションサッカーを掲げてきた指揮官は、自分たちが休まず相手の先手を取り、相手を休ませないことを選手たちに求めた。
相当に挑戦的なこのシステムは、名波監督の考えを具現化するものだった。
「形としてアタッキングサードに入るまでの回数が本当に増えてきて、ポゼッションも去年より増えたゲームが多い。その中でカウンターを食らった時のバランスも含めて、それから『休まない・相手を休ませない』を連続させる意味でもそう。選手たちにも合っている」
この時、ムサエフは離脱中だった。それでも実行に踏み切ったのは現状のままではいけないという危機感と向上心からではなかったか。当時は中位に位置しており、色々と試せる状況でもあった。しかし、[3-5-1-1]がチームのメインシステムになることはなかった。前に人数を割ける反面、攻撃から守備に切り替わった際に思ったように奪い返せない。後ろは晒された状態となり、ピンチを招いた。
試合の状況や選手のコンディション、ピッチ内の温度などを見極めて素早く軌道修正できるのは名波監督の持ち味だ。だが夏場以降、チームは勝利から見放される。