10年ぶりのJ1まであと1勝
緑色に染まったゴール裏に走り込み、観客席に飛び込んで雄叫びをあげる。その瞬間の気持ちは“Felicidade”の一言だとドウグラス・ヴィエイラは言った。日本語にすれば「幸福」。それ以上でも、それ以下でもなかった。
話を聞いた東京Vの選手が口を揃えたのは、奇跡的な勝利につながった1点が「全員の気持ちが1つになったゴール」だったということ。スコアラーとなった背番号9も「僕たち全員のゴールに対する執着心だったり、ゴールするという意欲、あのシーンでそれらが1つになったことでゴールを生んだと思っている。決めたのは自分だけれど、カミ(上福元)が上がってきたり、チーム全員の思いでゴールを生み出した。本当に嬉しい」と笑顔が弾けた。
上福元も「全員の強い気持ちが生んだゴールだったと思う。僕がああいう風に触りましたけど、みんなの気持ちが1つになって良かった」と語り、李栄直も「本当にみんなで取ったゴールだと思うし、そういう意味では(感情を)表現できないというか、爆発しちゃったというのが正直なところ」と振り返った。
大宮戦は退場者が出た後にフリーキックから1点をもぎとって、粘りがち。横浜FC戦も相手の激しい守備に苦しめられながら、最後の最後でコーナーキックから全員の気持ちが乗ったゴールで勝利を引き寄せた。今の東京Vにはこの上ない一体感と、2連勝による驚異的な勢いがある。
次なる相手は前線に日本代表クラスを多数揃えるJ1のジュビロ磐田。「あと1つ取らないといけないので、今日の勝ちが無駄にならないように、次の試合でどれだけできるかというところだけ考えて準備をしたい」と上福元。劇的な勝利の余韻に浸ることなく、気を引き締め直して次なる一戦に向かっていく。
ロティーナ監督と培ったサッカーを最後までやり遂げて10年ぶりのJ1へ。全員がこの思いを胸に、東京Vは猛烈な勢いとともに磐田に挑む。悲願達成まであと1つだ。
(取材・文:舩木渉)
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