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Jリーグ 6年前

東京V、90+6分の大爆発。“最幸”の瞬間はただの奇跡にあらず…悲願のJ1昇格まであと1勝

text by 舩木渉 photo by Getty Images

全てが“KAMI”合ったコーナーキック

上福元直人
GKの上福元直人はFW顔負けのヘディングシュートで決勝点をお膳立て。一躍ヒーローになった【写真:Getty Images】

「0-0という状況で1点が必要というのはわかっていたので、そのために自分が上がることで雰囲気が変わるところもあると思うし、自分もチームの得点に貢献するという強い覚悟を持って上がっていっているので、そういうところで勝負をかけるという気持ちをもってやっていました」

 上福元は停滞する流れを何とかして変えたい、その一心でゴール前に上がった。実はこのゴールの約3分前にも、コーナーキックの場面でペナルティエリア内まで入ろうとしてミゲル・アンヘル・ロティーナ監督らベンチの面々に止められていた。

 李栄直は「あれはみんなで止めました。みんなで『バカバカバカ!まだ時間あるぞ!』って。『何主役になろうとしてんねん!』という感じで普通にツッコんで、僕らが止めました。スタッフよりも早く止めた自信があります」と冗談めかして笑っていたが、勝負をかけるべきタイミングでないことはベンチの全員が承知していて、上福元を思いとどまらせた。

 だが、最終的に「自分も1点を取るための力になりたい」という強い思いは身を結ぶ。後半アディショナルタイムで2度目のコーナーキックは、ロティーナ監督もゴール前に上がることを許した。キッカーの佐藤とは一切打ち合わせなし。もちろん上福元を狙ったボールではなかったが、「強い気持ちで、自分のところにボールが吸い寄せられた」。

 最初はファーサイドでこぼれ球を狙おうと考えていた守護神は、駆け足でゴールに近づくにつれて「そうじゃねえな」と考えを改める。「自分がボールにダイレクトに触りにいくというか、そういう方がいいんじゃないか」。そしてニアサイドに猛然と突っ込んでいった。

 逆にドウグラス・ヴィエイラは、自らの役割を全うし、狙いを最後まで変えなかった。「あのコーナーキックのシーンでは全員がニアポストに入っていって、相手も一緒に連れていってくれた。そこで自分が(ニアに)行かず、ファーポストの所に残ってこぼれ球を狙っていたので、たまたま運良くこぼれてきた。時にはその決断がうまくいく時も、いかない時もあるけれど、あのシーンでは自分の決断がプラスに出た」と劇的なゴールの瞬間を振り返る。

 後半途中からピッチに立った痩身のブラジル人FWは、主審の判定にフラストレーションを溜めてイエローカードをもらう場面もあったが、「僕たちは勝つためにゴールを必要としていて、ゴールをするために自分がいい仕事をすることに集中していた」と求められたミッションを完遂した。

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