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Jリーグ 6年前

東京V、90+6分の大爆発。“最幸”の瞬間はただの奇跡にあらず…悲願のJ1昇格まであと1勝

text by 舩木渉 photo by Getty Images

決まるなら「最後」。待ち続けていたその瞬間

ドウグラス・ヴィエイラ
こぼれ球に詰めたのはドウグラス・ヴィエイラ。まっすぐに東京Vサポーターが陣取るスタンドへと走っていった【写真:Getty Images】

 後半、イバと野村の2トップが揃って足をつって交代してしまったが、カウンターからビッグチャンスをいくつも作り、終盤に引き分け狙いで守りに入ることもなかった。だからこそ「一瞬の隙で勝ち上がれるところから一気にどん底まで落とされた」という佐藤の言葉はより重く感じられる。

 運命の瞬間は、東京Vが待ち続けていた瞬間でもあった。

「やっている方の正直な感じで言うと、(ゴールが決まるなら)最後しかないと。お互いに今日は硬い。守備をしっかり固めて、攻撃はいいところを出せない、カウンターでワンチャンスと、普通のリーグ戦で見たら全然面白くない。ただこのレギュレーションというか、相手が引き分けでもOKというところで、自分たちに最後の10分、15分で勢いが出てくると思ってやっていた」

 そう語るのは李栄直だ。大宮戦で退場処分を受けた内田達也が出場停止のため、代わって先発出場。3-4-2-1で戦う東京Vの右シャドーに入ったが、後半開始早々に交代。それでも「絶対にそこが勝負になる」と最後の最後にチャンスが巡ってくることを、ベンチから信じ続けて待った。

 90分が経過し、第4審判が掲示したアディショナルタイムは「7分」。時計の針はどんどん進み、残り時間は刻々と減っていく。東京Vは相手陣内に人数をかけて攻め込み、猛攻を仕掛ける。だが、会場の雰囲気は横浜FCの勝ち上がりを悟り始めていた。

 そんな中、GK上福元直人からのロングパスが相手ゴール前に送られる。両チームの選手がもつれてこぼれたところに、横浜FCの右サイドから帰陣した北爪健吾が頭を出してクリアする。これで東京Vは右からのコーナーキックを獲得した。

 この時点で後半のアディショナルタイムは残り2分ほど。GKの上福元がベンチに確認をとり、ゴール前へと駆けていく。ボールをセットした佐藤優平は鋭いボールをニアサイドへ。そこに林陵平をスクリーンのように使って齋藤功佑のマークをかわした上福元が飛び込みヘディングシュート。一度は横浜FCのGK南雄太の右腕に止められるが、こぼれ球にドウグラス・ヴィエイラが反応してつま先で押し込んだ。

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