金明輝監督の抜擢は「劇薬」
日本サッカー界では「監督解任ブースト」なる言葉がよく使われる。今年で言えば、ロシアワールドカップの開幕2ヵ月前にヴァイッド・ハリルホジッチ監督が解任。西野朗監督のもとで低空飛行と芳しくなかった下馬評をはね飛ばし、2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を果たした日本代表が当てはまる。
サガンも指揮官交代後は、無敗でシーズンを終えた。竹原社長も「選手たちも感じてくれた」と振り返ったが、実際にピッチで戦った選手たちはどのように受け止めていたのか。アントラーズ戦後に「僕の意見ですけど」と断りを入れたうえで、権田は最後尾から見つめたチームの変化をこう指摘した。
「監督を代えるか選手全員を代えるかの二択で、選手を全員代えられないから監督が代わる。監督が代わったからチームがよくなったと言うのは簡単だけど、そこは本質じゃないと思う。選手たちが不甲斐なかったから、監督を代えるしかなくなった。選手全員のなかに『もっとやらなきゃいけない』と危機感が芽生えたからこそ、フィフティーフィフティーのボールに対して激しくなったし、攻守の切り替えも速くなった」
竹原社長は金明輝監督の抜擢を「劇薬」とも表現している。クラブの未来を託した、ある意味で大きな賭けだったからこそ、指揮官が正式に代わり、なおかつ午後7時からサポーターミーティングが開催された10月18日は、もしかすると「伝説の夜」としてサガンの歴史に刻まれるかもしれない。
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