今季を凝縮した敗戦。これは悪夢ではない
テクニカルエリアの一番前で呆然と立ち尽くしたまま動くことができない。突きつけられた現実を、ジュビロ磐田の名波浩監督は受け止められていないようだった。川崎フロンターレに逆転負けを喫した磐田は、試合前から順位を3つ落とし、16位でJ1参入プレーオフに回ることになった。
割り切ってブロックを作り、相手の攻撃を愚直に跳ね返す。「守備しかしていない」と中村俊輔は振り返り、「残留を決めることが全てだった。引き分けでも、という気持ちはあった」と話したのは、同じく相手に食らいついた山田大記だ。この日の磐田に求められたのは『負けない』こと。勝利で終われれば最高だが、ドローでも申し分ない。勝ち点1さえ積めればJ1残留が決まる状況だった。
しかし、待っていたのは絶望だった。1-1で迎えた後半アディショナルタイム、バイタルエリアに縦パスを付けられると、家長昭博の突破から最後はオウンゴールを献上。再開のキックオフ直後に試合は終わり、磐田はラストプレーで地獄に叩き落された。
名波監督が「残酷」と言うように、サックスブルーにとって考えうる最悪の結果だといえる。しかし一方で、今シーズンを凝縮したようなゲームでもあった。磐田は後半ラスト15分の失点が最も多く、この日もその時間帯にゴールを許している。
あまりに劇的な敗戦は、決して悪夢などではなかったのだ。
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