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C・ロナウド、至極のワンプレー。組織守備を無効化するフェイントは“真の個人技”

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

「実戦で役にたつ個人技」というもの

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C・ロナウドの加入で、間違いなく安定感も競争力も上向きになっている【写真:Getty Images】

 高い位置でボールを回収して最後尾から組み立て直したユベントス。アレックス・サンドロの故障により後半から左サイドバックでプレーしていたジョアン・カンセロが、カットインを仕掛ける。対面のヴァスがプレスに行き、裏のスペースが空いたことを確認したロナウドは、縦に走りこんでパスを呼び込んだ。

 もっともそこには、ガブリエウが飛び出して対応を図る。その後ろにもヴァスが戻ってカバーを図っていた。DFと正対しても、右足は警戒され左側はコースを体で切られている。中央に折り返すにもスペースがないような状態だ。

 すると次にロナウドは、右足でボールをまたぐ小さなフェイントを行うと、すぐさま左足でタッチし一歩左にずらした。これにガブリエウを惑わすと、まんまと縦を取った。こうしてアングルを確保し、あとは正確なボールを流し込むだけとなった。

 単なる小技ではない。見た目に派手というだけでなく、戦術的にちゃんと意味のあるフェイント。バレンシアはラインを整え、シュートもラストパスのコースも切っていた状態。しかしC・ロナウドが小さなシザーズとタッチを織り交ぜて一歩ガブリエウの横に出た時、きちんとカバーを行ったはずのディフェンスは無効にされたのである。

 実戦で役にたつ個人技というのは、まさにこういうものを示すのだろう。もうすっかりユーベの攻撃の軸になっているC・ロナウドだが、またしても彼は接戦でチームのゴールを創出した。

 そして今度は前節のマンU戦と違い、彼がからんで生み出された点が無駄にはならなかった。試合終盤には疲労からかミスが連発し、マッシミリアーノ・アッレグリ監督はチームを叱責するが、一方で最終ラインは見事な集中力を披露。とくにジョルジョ・キエッリーニは、最後尾での見事なカバーリングでピンチを2度しのいでいた。

 CL制覇を目標に据えるユベントスは、とりあえずグループステージ突破で第1関門をクリア。C・ロナウドの加入で、間違いなく安定感も競争力も上向きになっている。それはセリエAでも、CLでも同様だった。

(文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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