伏線があった決勝点に繋がるフリーキック
なんとか1点が欲しいヴェルディにとって、もう1つ「誤算」があった。ただし、こちらは歓喜を運んできた。71分の決勝ゴールにつながったフリーキックの直前、ヴェルディはより攻撃的に振る舞うため、満を持してレアンドロを投入する。
ベンチに下がったのは右ウィングバックで奮闘していた奈良輪雄太。この交代によってヴェルディは田村直也を右サイドバックにし、香川勇気を左サイドバックに下げる4-3-2に変更しようとしていた。そんな折、レアンドロがペナルティエリア内に到着した次の瞬間、運命を好転させる1点が決まるのである。
43分、53分とほぼ同じ場所からフリーキックを蹴っていた佐藤は「自分の中でもめちゃくちゃそこの角度のファウルが多いなと。自分がキッカーとして蹴るタイミングが多いなと思っていた」と伏線を感じ取っていた。
さらにロティーナ監督から前日練習で受けた叱咤、後輩の井上からの「ニアを1個越えてください」という要求にも応え、左サイドから平智広の頭にピンポイントで合わせる会心の一振り。「ああやって狙い通りに、お互いに分かりあった中でのゴールというのは非常に気持ちいいものがある」と見事に伏線を回収した。
このゴールによりヴェルディは一気に優位に立った。大宮は引き分ければ勝ち上がれるとはいえ、1点を失ったことで同点に追いつかねばならない。一方、アウェイに乗り込んだ緑の軍団は虎の子の1点を守り切れば次の舞台に進める。数的不利なこともあり、当然ながら守りを固める方向へ完全にシフトした。
さすがに4バックのままでは危険なため、ゴールが決まった直後の74分にFWの林を下げてDF若狭大志を投入。センターバックに10試合ぶり出場の背番号2を据え、左の香川のポジションを高めに保って攻撃の芽を残しつつ5バック気味に構えてゴール前を固めた。
「引き分ければ勝てる」という安心感からか、前半からやや受け身な傾向がプレーに表れていた大宮は、失点してもなかなかその流れを変えることができない。最終的にはなんとかゴールをこじ開けるため、81分に身長199cmの巨漢FWロビン・シモヴィッチを投入し、ペナルティエリア内でパワープレーを挑む。だが、ヴェルディ守備陣の集中が切れることはなかった。
「相手がシモビッチを入れたということは、逆にこちらからしたらやりやすくなったというのはあった。絶対そこに当ててきて、パターン的に次のボールがこぼれる、それをどうするかという感じになったから、1回で終わらず2回目もしっかり反応してクリアできていたし、よりあの10分間の守り方がはっきりした」