10人になっても一歩も引かず
その一手目がレアンドロを入れてのシステム変更。中盤でバランスを取る内田を下げて、井上潮音をアンカーにする3-5-2で大宮をさらに押し込もうとしていた。しかし、数的不利になったことでプランの見直しを迫られる。
そこでまずは井上をアンカーに、2シャドーを務めていた佐藤優平と渡辺皓太をインサイドハーフに下げる5-3-1にして対処。そして、64分に渡辺を下げて李栄直を投入してシステムをキープしながら、守備に軸足を置きつつ一刺しを狙う戦い方を選んだ。
とはいえヴェルディは一歩も引かなかった。数的不利になればボールを相手に握られ、押し込まれてしまうのが一般的だが、10人になってもいつも通りの「やるべきこと」を貫く。林は退場者が出た後の戦い方について、次のように話していた。
「やっぱりロティーナとイバン(・パランコ=アシスタントコーチ)の教えというのはすごい。ポジションを守ったり、自分たちが(局面で)数的優位を作る動きをすごくやっているので、それを10人でもやれたことによって、11人の相手に対しても自信を持ってやれたと思います」
実は李栄直の投入は指揮官からのメッセージにもなった。187cmの長身を誇る北朝鮮代表MFは、本来は守備的な役割を得意とし、センターバックも務める。だが今季から加入したヴェルディでは攻撃で流れを変えたい場面などで途中投入されることが多く、実際にJ2リーグ戦で記録した4ゴールのうち3つは途中出場から奪ったものだ。
11人の状態で中盤のインサイドハーフに入れば、前に勢いをもたらす動きが求められる。とはいえ今回は10人の状態での出場。そこでロティーナ監督に託されたミッションは、得意とする守備の強度を確保することと、ボールを奪った後に前線でターゲットになって時間を作ることだった。
これによってヴェルディの選手たちの意思はピタリと揃った。仮に大宮に押し込まれても、ボールを奪えば相手コーナーフラッグにめがけて大きく蹴り出す。ゴールキックの場面では李栄直がサイド二大きく張り出しながら高い位置に出ていき、相手DFと競り合って起点になる。そうすることで後ろの選手たちも押し上げる時間を稼げる。