戦況を動かしたジョーカー
後半に入ると、マインツは前から激しくプレッシングを仕掛けてくる。ドルトムントはなかなか前にボールを運ぶことができない。60分にはロイスがボールを奪われカウンターを食らう。61分には引いて組織立ったDFラインを前に、サンチョのスルーパスはロイスに通らない。マインツは“ロイス・システム”を研究してきたようだ。
こうした膠着した流れを変えたのは、パコ・アルカセルだった。64分にゲッツェに代わって投入されたスペイン人FWは、そのわずか2分後に先制ゴールを叩き込む。サンチョのスルーパスに右サイドを抜け出したロイスの折り返しを、きっちり押し込んだ。今季のドルトムントにおいては、アルカセルのジョーカー起用が、最も効率の良い得点パターンとなっている。
だが、アルカセルの電撃的なゴールは、流れを完全に引き寄せることはできなかった。70分、アヌエル・アカンジとダン=アクセル・ザガドゥの2CBは、ジャン=フィリップ・マテタとロビン・クアイソンの2トップが外側に開くことで揺さぶられ、失点を招いてしまう。
ハックのスルーパスに、ザガドゥは裏を取られ、クアイソンに同点ゴールを決められる。74分にもマテタ1人に守備陣が翻弄され、シュートまで持って行かれてしまう。
攻守に渡って緻密な戦術に則り、果敢に抵抗してくるマインツ。粘り強いプロビンチャは、隙のある王者よりも手強い。しかし決してドローに終わらず勝ち切るのが、今のドルトムントの強さと言えるだろう。
76分に決勝点を決めたのは、ユルゲン・クロップ時代の黄金期を知るベテランSB。ウカシュ・ピシュチェクが、ペナルティエリアの手前で1度はブロックされながら、技ありのミドルシュートを決め、ドルトムントは勝ち越しに成功した。
悪戦苦闘を強いられたが、アウェイで勝ち点3を獲得した。依然として無敗をキープ。ブンデスリーガで首位に立っている。