頭脳プレーで守備を撹乱せよ
オープンプレーでもマンツーマンディフェンスだからこその弱点はある。槙野は「ボールのないところの動き出しだったり、ボールを持った時のアイディアというのを存分に出さなくてはいけない」と語っていたが、まさにそこが問われる試合になる。キルギスの選手は1人がかわされると、周りの選手が慌てて自分のマークを捨ててカバーに入る癖があり、そこで生じたズレを他の選手が連動して埋める動きに乏しい。
日本が急造の組織だったとしても、ボールを持っていないところでフリーランに労を惜しまず、2人目、3人目の動きで相手の視線を撹乱していけば、ゴールに近いところで大きな穴を作ることもできる。アジアカップに向けたアピールという意味でも、各選手が頭脳的に相手のスペースを突いていく動きで突破口を生み出せるかはキルギス戦の見どころの1つになるだろう。
一方でキルギスの攻撃はカウンターがメインになるはず。エースストライカーのミルラン・ムルザエフが不在なのは痛いが、その中でもベルンハルトやイスライロフといった得点力のある選手の中盤からの飛び出しや、ボールと逆サイドのウィンガーのクロスへの飛び込みは警戒すべきだ。
左右のサイドを根城にするベクザン・サギンバエフやカイラト・ジルガルベク・ウールはカウンターのチャンスがあれば、しっかりとゴール前に入ってくる。今年のアジア大会にも出場した若手で、ムルザエフの代わりに10番を任されたエルニスト・バティルカノフや、ドイツでプレーするFWヴィタリー・ルクスも不気味な存在。相手の情報が少なくても、試合中にプレーの特徴と狙いを掴みながら柔軟に対応していく力が日本の選手たちには問われる。
手堅く勝利をものにするためには、ボールを持つ時間帯が長くなっても守備面で気を抜かず、我慢強くあること。相手の守備組織を崩しきれない中でも攻守において焦りは禁物で、それこそが欧米のチームとの試合とは全く違う「アジアの戦い」になる。
経験の浅い選手たちがアジアカップを前に実力を試されるキルギス戦。4-3の打ち合いを制したウルグアイ戦などとは全く異なる質の、もしかするとより難しい試合で森保ジャパンの進化と真価が問われる。
(取材・文:舩木渉)
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