原口元気の人間的成長
この陣容を見ると、キャップ数1ケタの選手が大半を占める。ゆえに、今回が40試合目の原口、36試合目の槙野、26試合目の柴崎、8試合目の東口という2018年ロシアワールドカップ組のけん引力が問われてくる。
「明日はもしかしたら自分が一番経験あるメンバーになるかもしれない。『あいつが一番頑張ってるから、俺も頑張ろう』みたいな感じで引っ張りたいし、一番頑張る、一番走るくらいの気持ちでいつも通りやりたい」と原口もロシアでレギュラーを張った選手としての自覚をピッチ上で示すつもりだ。
そもそも原口の場合、森保体制発足後、ここまで早く、若い世代に定位置を奪われる形になるとは全く予想していなかったはず。本人も厳しい現実を受け止めながら「もはや僕が(若手を)追っている。スタートで使ってもらえない悔しさはもちろんある」と本音を吐露する。それでも「サッカーはチームが勝たなきゃいけない」とフォア・ザ・チーム精神第一というスタンスに徹している。
そのあたりが人間的成長なのだろう。ロシアを経て、体得した人間力を遺憾なく発揮し、今回組む攻撃陣と生かし生かされる関係を構築できれば、指揮官の信頼はより高まる。そうなれば、アジアカップ本番でのスタメン奪回も見えてくるし、得点に絡む仕事も増やせるだろう。そういう布石を打てるのか。ロシア16強戦士としての意地と誇りを今こそ示す時だ。
原口と同じワールドカップのレギュラーだった柴崎も、存在価値を再認識させなければいけない時期に来ている。長谷部誠(フランクフルト)という絶対的存在が去り、ボランチ陣は目下、ロシアを経験した彼と遠藤航(シントトロイデン)がけん引する構図になっている。が、ヘタフェでの今季リーグ戦出場がわずか2試合にとどまっていることもあり、半年前ほどのキレの鋭さを欠いている印象も拭えない。「今、自分にできることを最大限やっている」と本人は言うものの、そういう感覚的な部分はより多くの試合をこなしてこそ表現できる。
キルギス戦で柴崎にどれくらいのプレー時間が与えられるか分からないが、周りを的確に動かす戦術眼とイニシアティブを示すべき。かつての遠藤保仁(G大阪)や長谷部が示した圧倒的な領域に到達すべく、ここは奮起してもらいたい。