山雅は松本市の人々のアイデンティティ
今季はJ1降格組のアルビレックス新潟にJ2観客トップの座を譲ったものの、サンアルのキャパシティを考えたら松本山雅の動員力は脅威と言っていい。新潟と同じ降格組の大宮アルディージャが9224人、ヴァンフォーレ甲府が7384人という数字にとどまっているのを見れば、勢いがよく分かるだろう。
甲府の海野一幸会長も「ウチは(後発の)松本に追い越されている」としばしば語っていたが、松本山雅のサポーターにとってこのクラブは「生きがい」であり「希望」なのだ。
「松本という町はつねに長野県の県庁所在地・長野と比べられ、低い立場に置かれてきた。これだけ大声で『松本』をアピールできるのは山雅だけ。ホントに気分がいい」と語る人々も少なくないように、山雅が地域の誇りとアイデンティティになっているのは紛れもない事実だ。その強い地元愛がクラブ愛、選手愛となってサッカーに向かう。
一度、松本山雅でプレーした選手は、「自分の息子」であり、他へ移籍しても気になる存在だ。だからこそ、シュミット・ダニエルが日本代表で出るか出ないかは大きな関心事だし、2014年J1初昇格の主力だった犬飼智也(鹿島)がアジアチャンピオンズリーグで奮闘していれば応援する。
実際、鹿島のクラブハウスに緑のマフラーを巻いたサポーターが訪れているのも目の当たりにしたことがある。それは犬飼のところだけではない。「応援されている」ことへの感謝が反町監督や選手たちのエネルギーになっているのだ。
「この2年間、昇格できなくて、ホントにサポーターに申し訳ないし、不甲斐ない思いでいた。真っ先にみなさんが喜んでいる姿を見たいと思った。気づいたらゴール裏に向かっていた」と地元出身の背番号3は語ったが、本当の意味で彼らを喜ばせるのは2019年だ。