2年後の東京五輪で狙う“下克上”
ゲームキャプテンを務める大井健太郎は以前、名波浩監督に話したそうだ。「拓磨はまさに僕ですよね」。指揮官は、背番号3の若手時代を思い出して納得した。大井が磐田に入団したのは2003年。黄金時代を築いた面々に囲まれ、練習で厳しく叱責されたこともあった。尋常ではない緊張感のなかでプロとは何かを学んできた。
「同じポジションの若い選手は自分にとってライバルになる存在。でも、見ていて足りないなと思うところは、僕もヒデさん(鈴木秀人ヘッドコーチ)、マコさん(田中誠コーチ)、山西(尊裕)さんたちから教えてもらいましたし、そういうのは伝えていくべきこと」
大井はこう語ると、未来を見据えて言った。
「10年後、僕がここでやっているより拓磨がここでやっている確率の方が高い。そうなった時にジュビロが弱くなっていたら悲しいし、うまいこと成長してもらえたらいいなと」
大先輩の薫陶を受ける大南は、サックスブルーを背負って立つ存在だ。そして、2年後には東京五輪が開催される。同年代のセンターバックは逸材揃いで、冨安健洋はすでにA代表に定着しつつある。立田悠悟や板倉滉、中山雄太なども世代をリードする存在だろう。
大南はチャレンジャーという立場だが、「その中でしっかり勝ち上がっていく選手が本当にいい選手だと思う」と気にしていない。むしろ“下克上”を楽しみにしているようでもある。
試合における経験値はまだまだ物足りない。とはいえ、原石は確実に磨かれ、鮮やかな色を放ち始めている。FC東京戦で見せたパフォーマンスを継続できれば――近い将来、ライバルの背中は今よりもっと近いところにあるはずだ。
(取材・文:青木務)
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