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「ボルト騒動」はなぜ長引き、なぜ幕を下ろしたのか? 世界最速の男をめぐる“大人の事情”

text by 植松久隆 photo by Getty Images

ボルト効果での人気は将来につながらず

本田圭佑
ボルトは去ったが、Aリーグには本田圭佑がいる【写真:Getty Images】

「ボルト破談」の報道が出た後も、「いや、商業的な興行としてみれば、ボルトがいた方がいいのでは」とか、「ボールをうまく蹴れなくても、ピッチを駆け抜けるボルトが観られるなら、スタジアムに行くよ」といったような様々な意見が耳に入った。

 しかし、そこにはきっちり反論しておこう。

 サッカーはプロスポーツ。広義の興行ではあっても見世物ではない。特に、他のプロスポーツに押されがちなこの国では、ファン受けする話題性重視のプロモーションも大事だが、やはり地に足を付けたレベルで確実に進めるのが肝要。今回の「ボルト劇場」のような一時的なマーケティングでは掘り起こせないところにAリーグの取り組むべき課題があるからだ。

 既に競技人口では他のあらゆるスポーツを凌駕している「やる」スポーツのサッカーが「見る」スポーツとして独り立ちできないという現実が、この国でのサッカーのメジャー・スポーツ化を阻んでいる。

 有り体に言えば、お金を払ってでも「見たい、観に行きたい」と思うサッカーを披露できるのは「ケイスケ・ホンダ」ではあっても、「ウサイン・ボルト」ではない。そして、そういう本物のプロでないと、継続的に足を運ぶファンは生み出せない。

 サッカーを純粋に愛するボルトが、いつの日かチャイルドフッド・ドリームを世界のどこかで成就させるように祈っている。申し訳ないが、実力が足りていなかった以上は、そのどこかが、Aリーグ、オーストラリアではなかったということだ。

 ボルトは去った。ここから、本田圭佑という「ほんまもん」を通じて、どんどん豪州サッカー・Aリーグに親しんでもらいたい。

(文:植松久隆)

【了】

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