マリノス式SBの経験を代表に繋げるには?
とはいえ好調時は手がつけられない。特に攻撃面での進化は目覚ましく、8つのゴールを演出するだけでなく、自ら「常に狙っているし、自信がある」という強烈な一発を、その自慢の左足で度々ゴールネットに突き刺してきた。そうしたプレーが国際的にも評価され、夏にはトルコ1部の強豪イスタンブール・バシャクシェヒルから獲得オファーも受けた。
そんな中でのA代表初招集。山中がアジアカップに向けて佐々木や車屋との競争を勝ち抜くには、まずチームとして目指すサッカーの方向性を理解し、組織の中で求められる最低限の役割を遂行した上で、個人の特徴を出していかなければならない。特に森保監督は個の力を発揮できていても、チームの中で任された仕事を疎かにするようであれば容赦なく厳しい判断を下す。そこはアピールに躍起になっても見失ってはいけない点だろう。
では、山中の個性を現日本代表の中でどう生かすか。マリノスではサイドバックに特殊なポジショニングや、他のチームではあまり見られないプレーが求められ、サイドバックでありながらサイドバックらしくないプレーにも磨きがかかっている。所属クラブでの経験は、森保ジャパンのサイドバックとしてプレーする上でも活かせるはずだ。
マリノスではサイドバックがビルドアップ時に4-1-2-3の「1」を担うアンカーの脇まで進出し、GKやセンターバックのパスを引き出し、ボールを前進させる「入り口」の役割を担う。そこからサイドに張ったウィングに展開して1対1を仕掛けさせ、インサイドハーフやサイドバック自らの飛び出しを促すというメカニズムも機能している。
サイドバックが内に絞ることによって、マークしてくるはずの相手ウィングポジションの選手が浮く。そうして味方のウィングが相手サイドバックとの1対1の状況を作りやすくする効果もある。さらに長い時間ボールを握って相手を押し込むため、カウンターを受けるとひとたまりもないが、サイドバックがアンカー脇に立つことで中央から直線的にゴールへ突撃してくる最も危険な形の速攻を遅らせる、防衛ラインとしての役目も果たす。
とはいえ森保ジャパンのサイドバックには、こういった特殊な動きが求められているわけではない。どちらかといえば従来のサイドバックのイメージそのままのプレーが、これまでの2回の活動では見られていた。
佐々木であれば守備者としての能力に優れるだけでなく、後方からアタッカーをサポートする。長友であれば積極的にオーバーラップを仕掛けて2列目の選手とのコンビネーションを使いながら崩しに関わっていく。
特に2列目の左サイドには、10月であれば原口元気や中島翔哉が配置されていた。彼らはともに右利きの選手で、中に切り込むドリブルからのフィニッシュやアシストを得意とする。後方のサイドバックは彼らの突破を妨げないよう、その外側のスペースを使う場面が多かった。