ユーベが克服すべき課題
そしてマンチェスター・Uのディフェンスラインを振り回し続けた成果は、65分の芸術的なゴールとして結実した。右に左に動いていたC・ロナウドが、中央の位置に張って裏へとダッシュ。これを見たレオナルド・ボヌッチは、最後尾から正確なミドルパスを放った。頭越しに来るボールの軌道を完璧に捉え、足元に落ちてきた瞬間右足を振った。ダビド・デ・ヘアは一歩も動けず、軽く左腕を振るだけ。強烈な弾道のシュートはゴール右上に突き刺さった。
ここからユーベは、攻めに来た相手のスペースを利用してやりたい放題。しかし彼らは、ここからの試合運びに失敗した。
まずはクリーンな決定機を作りながら、決め切れなかった詰めの甘さ。ディフェンスを引きつけ、味方をフリーにした状態で打たせた数々の決定機がゴールから逸れた。
そして、選手交代で最終ラインを補強し逃げ切りを図りながら、相手のパワープレーを止め切れなかったことだ。マルアン・フェライニに当てるという相手の手は分かっていながら、対応できずに後手に回り、よりによって立て続けにゴール前で相手にFKを与える。一度はファン・マタに直接決められ、2度目はフェライニの落としを防げずオウンゴールを招く格好となった。
押し込められた時の意外な脆さは、昨季も露呈していたところ。安定度を担保するはずのアンドレア・バルザーリの投入などが奏功せず、堅守を売り物にしていたはずなのに集中力が保てない。敗戦でもグループリーグ通過への有利な状況は動かない状態での試合だったとはいえ、これらの点が解決されないと決勝トーナメント進出以降に不安を残すことになる。
「正直いえばここ2、3試合、僕らは冴えない内容の試合をしていた。上を目指すなら、これを教訓にして向上を図らないといけない」。ジョルジョ・キエッリーニは地元メディアに対し危機感を口にした。C・ロナウドの加入で、ユーベのチーム力が著しくアップしたのは疑いのないところ。だがビッグイヤー獲得のために克服するべき課題は、まだ残っているようである。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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