饒舌な時こそ、好調な証
そして、連勝街道が伸びるにつれて、かつては「どんどん仕掛けてこい」と念じていた今野の胸中にも大きな変化が生じていると、レッズ戦後に声を弾ませている。
「自分がそれほどボールを触らなくても、いまは前線にいい選手が多いからね。僕は後ろでバランスを取りながらサポートして、ちょっと困ったときには僕のところへどうぞパスを、あとはご自由に、といった感じですかね。自分のところにパスが来れば落ち着かせて、また展開して、と。今日なんかはショートパスもよくつながったし、裏も取っていたし、ワンツーもよく出せていた。特に後半は、見ていてかなり楽しかったですよ」
次節で勝ち点1を上乗せすれば、残り2試合を全敗しても柏レイソルとV・ファーレンに上回られることはない。要は自動降格圏に沈む可能性がゼロになり、直接対決で破竹の連勝を「8」に伸ばせば、最終的にベルマーレを上回ることも確定する。つまり、J1残留を一気に決められる。
「完璧に残留を決めたい。数字上、どう考えても残留と言えるところまで突っ走って、まずホッとしたい」
いよいよ大詰めを迎えるシーズンへ気合いを新たにした今野は、再び苦笑いを浮かべながら、心の奥底のさらに奥に封印してきた、個人的な目標をちょっとだけ打ち明けている。
「実は今年、1点も取っていないんですよ。ずっと続けてきたから、マジで1点取りたいですね。ただ、いまの役割はバランスを取るのが役目だから、正直、取れる気がしない。ちょっとピンチです」
FC東京に移籍した2004シーズンから、J1でプレーした合計12年間で今野は45ゴールをマークしている。今季もフロンターレ戦での復帰へ向けた試運転として先発し、53分までプレーした8月26日のY.S.C.C.横浜との明治安田生命J3リーグ第20節でゴールを決めている。
開始わずか3分で決めた早業であり、J2を含めたすべてのカテゴリーでゴールを記録する快挙でもあったが、やはりJ1でのゴールを継続したいのだろう。もっとも、こうした微笑ましい話題がポンポンと飛び出してくるときは、心身両面で今野が絶好調な証。右肩上がりの曲線を描きながらシーズンを終えようとしているガンバの中心で、今野は代えの効かない存在感をますます増幅させていく。
(取材・文:藤江直人)
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