ガンバを蘇らせた今野の働き
苦笑いしながら6年前を振り返った今野は、今季はまったく違うと声を弾ませる。戦列復帰する直前の順位はV・ファーレン長崎と勝ち点21で並び、得失点差でかろうじて上回る17位。悪夢が蘇っても不思議ではないどん底で、ピッチに立つとワクワク感が頭をもたげてきた。
「みんな少なからずプレッシャーを感じていたはずだし、僕自身も例外ではなかったけど、それでも試合前の時点でプレッシャーとワクワク感が五分五分というか。いまはそれくらい良好なメンタリティで試合ができているし、それがチーム全体の躍動感につながっていると思う」
1つの黒星でチームが置かれた状況が一気に暗転する、ハイレベルな残留争いが繰り広げられていたなかで、なぜ心を躍らせる自分がいたのか。答えはボランチの位置から見える視界の変化にある。
前回7連勝を達成した2014シーズンは、けがから復帰した宇佐美貴史と新加入のパトリックが夏場から2トップを形成。彼らにボールを預ければ、どのような形のパスであれ、2人だけでゴールまで持ち込める推進力があった。
ゆえに今野と遠藤保仁のボランチだけでなく、阿部浩之と大森晃太郎の2列目も、まずは相手ボールを奪う泥臭い仕事に徹した。破竹の快進撃を続け、レッズを逆転で下してJ1を制した後半戦の心理状態を、今野はこう振り返ったことがある。
「僕のところにどんどん仕掛けてこい、と心のなかで思っていた。でも何もやらせないよ、逆にボールを奪ってやるよ、と。負ける気がしない、と思いながらプレーするのが僕のいいところだし、特に後半戦は本来の自分を出せたかなと思っている」
翻って今季はどうか。チームでトップ、リーグ全体でも3位タイの15ゴールを挙げている韓国代表のファン・ウィジョが、エースストライカーの貫禄と輝きを放つ。さらにようやくトップフォームを取り戻してきたアデミウソンか、夏場にヴィッセル神戸から加入した経験十分の渡邉千真がコンビを組む。