選手たちの個性は埋没
ブロックを作って守れば後ろが重たくなり、ボールを奪っても前に人が足りないため、パスの出しどころが限定されてしまう。前から奪いに行っても、規制をかけられていないため最終ラインは押し上げを躊躇してしまう。そして、中盤の選手は広大なスペースに取り残され、走り回るも相手にいなされてしまう。
2週間の準備期間があったとはいえ、それまでほとんど用いなかったシステムで完成度を示すのは難しい。ましてや相手が川崎Fであれば、新布陣も付け焼き刃の域を出ないだろう。
「システムありきではなくて選手の力やタイプの組み合わせだと思っています」と、加藤望監督は振り返ったが、3-4-2-1(5-4-1)の布陣で各々が持ち味を発揮できていたとは言い難い。伊東純也、小池龍太による右サイドのラインは分断されたも同然で、オルンガは最前線で孤立しフラストレーションを溜め込んだ。選手たちの個性は、ことごとく埋没した。
「5-4-1でうまく守ってカウンターを素早くという意識でやっていたんですけど、いい取り方ができなくてカウンターにも持っていけなかった。ほとんど攻撃の形は作れなかったかなと思います」
伊東はそう話したが、彼がスピードを活かすようなシーンはほぼなかった。速攻が狙いの一つだったにもかかわらず、その急先鋒となるべき選手が持ち味を出せなかった点も、新システムが全く機能しなかったことを物語っている。
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