攻撃のバリエーションをいかに確保するか
不安要素があるとすれば、アタッカー陣の組み合わせが限定されてしまうことか。準々決勝を終えた段階で、安部裕葵と藤本寛也がチームを離脱。郷家友太も負傷の影響で別メニュー調整が続いていて万全の状態ではない。
彼らはいずれもサイドでのプレーを得意とする選手で、現時点でチームに残っている純粋なウィンガータイプの選手は滝裕太のみ。仮に斉藤光毅や久保をサイドで起用することになれば、2トップは田川亨介、原大智、宮代の3人から選ぶことになり、交代カードのバリエーションが減ってしまう。
これまで戦ってきたどの相手よりもレベルの高いチームということもあり、サウジアラビア戦は何が起きてもおかしくない。もし劣勢に立たされた時、攻撃的な交代カードの選択肢が少なければ、相手も対策を立てやすくなってしまう。
とはいえ今大会を見る限り、日本の実力は頭一つ抜け出ている。全チーム中最多得点こそカタール(18得点)に譲っているものの、北朝鮮、タイ、イラク、インドネシアと戦ったうえでの15得点は見事。カタールは準々決勝タイ戦で延長戦までもつれた末に7得点を奪ったが、これまでの試合を見る限りではいまいち競争力に欠けるチームという印象だった。
我慢する時間が長く、完全アウェイかつ猛烈な雷雨の中でしぶとく勝ちきったインドネシアとの戦いを終えてU-20ワールドカップの出場権を獲得した日本。試合後の選手たちの表情は、世界への切符を掴み取って燃え尽きるのではなく、すでにアジア制覇に向けて切り替わっていた。
センターバックとして獅子奮迅の活躍を披露した小林友希は「まずはこの大会で優勝することがチームの目標でもあるので、まずチーム全員、スタッフも含めてしっかり次の準決勝に臨んで、決勝でも勝って、優勝する」と力強く語る。
久保も「すぐ次に切り替えて、次の目標が優勝というところなので、まず1つ目の目標をクリアしたのでて、2つ目の目標に入ればいいかなと思います」と引き締まった表情で話していた。
サウジアラビアに勝てば、カタール対韓国の勝者が決勝の対戦相手となる。これまで見てきたパフォーマンス、試合内容、調子などを考慮すれば、決勝で日韓戦が実現する可能性も高い。まずは中東のパワフル軍団を打ち倒し、頂点への挑戦権を掴み取りたいところだ。
(取材・文:舩木渉)
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