影山監督の偽らざる本音
大会途中で「送り出す側」になったU-19日本代表の影山雅永監督も、まだ安部の離脱が確定していないインドネシア戦翌日の29日に取材に応じた際、こんなことを言っていた。
「もちろんこっち(AFC U-19選手権)の準決勝、決勝も大事です。昨日の観衆もすごかったけれど、(ACL決勝は)10万人のお客さんが入る試合。だから僕には2通りあって、(U-19日本代表の)監督としては『いやあ何言っているんだ。ここにいる選手たち全員で戦うんだぞ。出て行くなんて許さん』というのもあって、でも1人の指導者としては『それは高いステージでやったほうがいいじゃん!』というのもある。二枚舌と言われようが、ある(笑)」
これは影山監督の偽らざる本音だ。安部の離脱に関しては「僕のところで決めることじゃなくて、技術委員会であったり、関塚(隆)技術委員長であったりがいろいろ考えているところかもしれない」が、「もしそうなったときには、喜んで送り出してあげる」つもりだったのである。
これは指揮官が欧州で再確認した育成における「道筋はどうでもいい」という考え方に基づいている。今夏、U-19イングランド代表はU-19欧州選手権でグループリーグ敗退に終わり、来年のU-20ワールドカップ出場を逃した。昨年U-20とU-17のワールドカップを制した“王者”が、まさかの苦杯を舐めたのである。影山監督はその現場を視察していた。
だが、イングランドの予選敗退は、U-20ワールドカップというショーケースでの挑戦の機会を失う代わりに、若い選手たちにとっては得るものがあったのかもしれない。
イングランドは主力の多くをプレミアリーグの各所属クラブのプレシーズンキャンプによって招集できなかった。それでも「将来優れた選手がその国の代表選手になって世界的に活躍するというのが最大の目的」と考えた時に、U-19代表で同年代の選手と戦わせるか、所属クラブでワールドクラスの選手と競争させるか。どちらが選手の成長にとってプラスになるのか、答えは明らかだった。