本人も意識する日本代表の舞台
7月に行われたV・ファーレン長崎との天皇杯全日本サッカー選手権3回戦と、10月14日に行われた柏レイソルとのルヴァンカップ準決勝第2戦。ともに決着がPK戦へともつれ込んだなかで、緊張とプレッシャーが交錯する1番手に指名されて事も無げに成功させたのが杉岡だった。
「天皇杯でも1番手だったので、あまり緊張しませんでした。外してもいい、というわけではないですけど、そういう気持ちで思い切り蹴りました。その方が自信を持って蹴れるので」
こう語る杉岡に、ずばり本音を聞いたことがある。干支がひと回り違う大先輩の長友を意識しているのか、と。西野ジャパンが繰り広げた熱戦の余韻が残っていた7月上旬。首を縦に振りながら「テレビ中継はかなり見ました」と笑顔を浮かべた杉岡は、こんな言葉を紡いでいる。
「1対1が強いし、守備のときのポジショニングもよかった。そういうところは見習っていきたい。ワールドカップは夢の舞台だし、自分が立ちたいという思いもありますけど、まずは湘南でもっと結果を残さないといけない。不動のレギュラーとは思っていないし、そもそも湘南にはそういう存在が少ない。だからこそ周囲から『アイツがいないと勝てない』と、思われるくらいの存在にならないと。東京オリンピックもあるし、目の前のことをひとつずつやっていくだけだと思っています」
胸中で誓いを立ててから3ヵ月あまり。その間に船出した森保ジャパンで、昨年のFIFA・U-20ワールドカップをともに戦ったMF堂安律(FCフローニンゲン)とDF冨安健洋(シントトロイデンVV)がデビュー。堂安に至ってはウルグアイ戦で勝ち越しとなる代表初ゴールを決めた。
「同世代がプレーすることによって、やっぱり現実味を帯びてくる。そこは意識せざるを得ないですね。いまは自信をもってプレーできるようになっている。コンディションも上がってきているので、そうした積み重ねだと思っています」
ルヴァンカップ決勝で急にはね上がったわけではなく、愚直な努力の継続が力になっていると実感している。そこへ、東京オリンピック世代の海外組から得た刺激が向上心をさらにかき立てる。杉岡に宿る潜在能力がさらに開放され、長友が長く頂点に君臨してきたA代表の左サイドバックの序列争いに大きなうねりを生じさせそうな状況が訪れつつある。
左利きの左サイドバックでは、リオデジャネイロ・オリンピック世代の25歳、山中亮輔(横浜F・マリノス)も強烈な存在感を放っている。就任時から「世代交代」と「世代間の融合」を掲げた森保監督が、直近の11月シリーズでどのような決断をくだすか。注目のメンバーは11月8日に発表される予定だ。
(取材・文:藤江直人)
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