曹監督も認めるメンタリティ
左利きの左サイドバックが重宝される理由は2つある。まずはキックの質だ。左サイドを攻め上がってクロスをあげる場面で高低や強弱、カーブなどの変化をつけて、相手ゴール前へ走り込む味方へピンポイントで合わせるには、利き足で蹴ったほうが必然的に精度は高くなる。
次は相手との距離だ。たとえばドリブルを仕掛ける場合、レフティーは自身の利き足、つまり左タッチライン側にボールを置く。自分の体の横幅分だけ相手との距離が生まれ、ボールを奪われにくくなる。そこにサイズという天性の武器も兼ね備える杉岡は、自身の現在地をこうとらえていた。
「自分の長所はビルドアップで縦につけられるところと、ボールを前へ運んでいけるところ。左足によるクロスや縦パスも評価してもらっていると思う。ただ、守備のところで世界にも負けないような対人の強さを身につけなきゃいけないし、ファーストタッチも含めて、技術的にもまだまだだと思っています」
心技体で比較すれば、杉岡は荒削りながらも「体」と「技」の部分で、長友が築く牙城に風穴を開ける可能性を秘めていると言っていい。ならば「心」はどうか。曹監督は今年2月に発表した著書『育成主義 選手を育てて結果を出すプロサッカー監督の行動哲学』(カンゼン刊)で、ルーキーイヤーの杉岡に関してこう記している。
「僕のなかでは開幕へ向けてチームが始動したときから、戦力としてある程度の計算を立てていた。杉岡の一番いいところは、ミスを犯しても下を向かないメンタリティーの強さにある。(中略)もちろん失敗はするけれども、プレーのなかにおける波が非常に少ない。18歳だろうが35歳だろうが、波の少ない選手は、特に後ろのポジションにおいては、どの監督にとっても使いたいと思う理由になる」
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