「もし出番が少なくても、腐るのは絶対に違う」(山田)
もちろん課題もある。前半の終わり際にはボランチが2人とも立ち位置を後ろにとりすぎてしまい、チーム全体の重心が下がってしまった。山田自身も大事な場面でシュートを決められず、なかなかボールに絡めない時間帯もあった。
出番が得られない試合があっても、上手くいかないプレーがあっても、折れずに結果を出すことに対してフォーカスできたのには、「必ずU-20ワールドカップの出場権を獲得しなければいけないと思っていますし、この大会に来たくても来られなかった選手がいるので、自分がもし出場機会が少なかったとしても、腐るのは絶対に違うと思う。100%の準備をして、チームの優勝に貢献できるように頑張りたい」という山田なりの信念があったから。
他の選手たちも大なり小なり同じような思いを胸に秘めているはず。滝や萩原、原、大迫といったイラク戦で出番を得て躍動した選手たちのプレーからは、チームのために貢献するだけでなく、これまでの悔しさをボールにぶつけるような闘争心が感じられた。
彼らに触発されたか、翌日の練習ではイラク戦でベンチに回った選手たちの振る舞いからもメラメラと燃えるものを感じた。北朝鮮戦、タイ戦こそチームの中心として戦ってきた者たちも踏ん反り返ってはいられず、世界への切符をかけた大一番に誰が出場するのかは現状全くわからない。
チームの戦術浸透や一体感、競争力を高めることができたイラク戦での収穫は大きい。U-20ワールドカップまであと1つ。完全アウェイのインドネシア戦、そこに全員が持てる力の全てを注ぐ。
(取材・文:舩木渉【インドネシア】)
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