指揮官の狙い通りだった崩しの形
中盤で怖がらずにボールを受けて有効なスペースや人にパスを預け、さらに動き直して空いたスペースに走り込み、相手の陣形を崩しながらゴールに近づいていく。これはまさに今季の横浜F・マリノスで山田ら中盤の選手に求められていた動きの1つ。
U-19代表でもイラクのDFが2人目、3人目が連動するプレーについていけないことがスカウティングの時点で判明し、チームに共有されていた。何気ないパスとゴール前への走り込みだったかもしれないが、今季の積み上げと成長、試合の中での戦術理解とが合わさった決定的なプレーだった。
「スプリントを入れて、(パスを)出した後は自分もしっかりああやってゴール前に入れているのは収穫かなと思います」と山田自身も手応えを感じている。
田川亨介のゴールにつながった場面で、左サイドバックの萩原を走らせた起点のパスも、「球際はすごくくるんですけど、2人目の動きとか、背後にサイドバックが出てくるところに、こういう相手はルーズになるので、そういうのはチャンス」と対人能力の高い相手DFの癖を逆手にとったもの。細かな連動が効かない相手守備陣の間隙を縫うプレーが冴えた。
これらのプレーがチーム戦術の一部に組み込まれていたというのは、指揮官の言葉で裏づけられる。イラク戦に向けて「サイドバックのビルドアップや、サイドハーフが持った時にどう関係性を作るか」という部分の向上を感じていた影山監督は、「イラクには人に強いDF、そしてアクションを起こした選手にしっかりついてくるDFがいたので、そこにできたスペースをうまく使っていこう」という狙いを選手たちに伝えていた。
爽やかな好青年の印象が強い山田は、守備でも体を張ることをいとわなかった。「アジア予選は自分たちのバランスをあまり崩してはいけない大会」と、藤本とともに守りにも意識を割く。もともと攻撃的なプレーを好むテクニシャンだが、セカンドボールの回収などにも精を出した。