慎み深い生活を送り続けた幼少時代のモドリッチ
町がかつてあった日々を徐々に取り戻していく中で、モドリッチ一家は自分たちの息子にとって最も重大な決断を下すことを迫られていた。彼らはホテル・コロヴァーレを去り、ホテル・イジュへと移ったのだった。そこはさらに小さな宿泊施設で、現在は廃墟となっていて不法居住者やホームレスに占拠されている。
イジュはコロヴァーレとは違い、沿岸から離れているために海目当ての旅行者が宿泊するホテルではなかった。が、ルカが初頭教育を受けていた学校から近く、何よりもNKザダールの練習場が歩いて数分のところにあった。それほど快適な施設ではなく、部屋も小さかったものの、家族の長男は節度ある幸せな生活を享受し続けている。
授業が終われば、フットボールがルカの「モウダス・オペランディ」となった。NK、友達と、または一人だけでよくプレーに興じた。ルカ本人がよく思い出すことだが、両親が彼を見つけ出すのはじつに簡単だった。幼いルカは慎み深い生活を送り続けながら、ただただフットボールに明け暮れていたのだった。当時の彼を知る人物と話をすれば、共通の答えが返ってくる。
「今の子供たちは、テレビを見たりテレビゲームをしたりフェイスブックをしたりと、家に閉じこもっている。ルカの家族は総じて背が低かったが、彼は父親と同じく、とても強靭で、筋肉隆々の足を持っていた。それは偶然の産物なんてものじゃない。彼は毎日、路上で壁を相手にボールを蹴り、広場でもプレーしていた。ただ走るだけのときもあった」
(文:ビセンテ・アスピタルテ、ホセ・マヌエル・プエルタス/翻訳:江間慎一郎、再構成:編集部)
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