熾烈な生存競争、数名のプロ選手の存在を刺激に
加入に至った経緯を苦笑いしながら振り返る吉田篤は、いわきFCの練習に初めて合流した今年2月以降の約2ヵ月間で体重が4kg増えて74kgになったと明かす。1週間の練習の6割から7割をストレングストレーニングが占め、さらに3月の1ヵ月間がほとんどボールを使わない恒例の「鍛錬期」に指定されたこともあって、加入直後から徹底的に体を鍛えあげた。
「鍛錬期は本当にやばかったですね。ストレングストレーニングの時間が長いし、つらいし、疲れるので、家に戻った後は寝るだけです。午前中の練習に備えて朝も6時半には起きるので、午後10時過ぎには布団に入っています。毎日きついですけど、けっこう選手も入れ替わっているので、そうならないようにしっかりやらないといけないと思っています」
決意を新たにする吉田篤の言葉からも伝わってくるように、選手を大幅に入れ替えてきた毎オフの動向が、選手たちにいい意味での刺激を与えている。今シーズンのカテゴリーは、J1から数えて6つ目に当たる。身分はアマチュアだが、ピッチ上の一挙手一投足には厳しい視線が向けられているからこそ、妥協することなく精進を重ねていく雰囲気がチーム内には満ちている。
しかも、吉田篤は今シーズンの始動時に行われた血液検査の結果、鉄分が不足していることが判明。ドームの「ドームアスリートハウス ニュートリションチーム」に所属する、栄養士の資格をもつ田中初紀さんの指導のもとで鉄分を補うものを含めて4種類のサプリメントを摂取。体を内面からも変えながら、8月を終えた段階で公式戦において16ゴールをマークしている。
「サプリメントに関してはいままで飲んだことがなかったけど、自分の目に見えない部分で変わり始めていると思います。自分は左利きなので、右からカットインしてのシュートが武器ですね。目標にしている選手はいないというか、とにかくまずはプロサッカー選手になりたい」
今シーズンからは平岡、榎本、昨年8月にCSマリティモ(ブラジル)から加入した21歳のFWルーカス・マセドの3人が「プロ」になった。目標とする身分の選手が身近にいることも、吉田篤をはじめとするチームメイトたちの励みとなり、彼らがもつキャンバスには「刺激」という名の彩りがさまざまな形で書き加えられていく。
(取材・文:藤江直人)
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