大迫と若原、そこに加わった谷
サッカーは11人で戦うスポーツだが、GKのポジションはチーム内に1つしかなく、最も動かしにくい役割である。
ひとたび正守護神が定まってしまえば、負傷や出場停止などのアクシデントがない限り、なかなか控えGKにチャンスが回ってくることはない。だからこそ節目でのポジション争いは熾烈で、その競争によって関係性がギクシャクしがちな側面もある。
もちろんGKの競争はクラブレベルだけでなく、国を背負って戦う代表チームにも例外なく存在する。その国のトップクラスのGKが集まる場所だけに、代表でのポジション争いがより激しいものになることも珍しくない。
もっと踏み込めば、よく「一体感をもって」と選手たちは言うが、本当の意味で一枚岩になれるチームはそれほど多くない。入れ替わりが多くどこかでチャンスが巡ってくる可能性が高いフィールドプレーヤーではなく、固定されがちなGKのアンバランスさが、「一体感」を損ねる原因の1つになることだってあるのだ。
とはいえ日本では、いわゆる「GKチーム」が良好な関係性を保ちながらチームに貢献しているケースも多々見られる。現在、インドネシアでAFC U-19選手権に参戦しているU-19日本代表も、GKの3人は互いを高め合うポジティブな関係性を作り上げている。
もともとこのチームでは1999年生まれの大迫敬介と若原智哉が、ハイレベルな競争を展開してきた。公式戦であろうとも、2人のどちらが起用されるか最後までわからず、サンフレッチェ広島と京都サンガF.C.の若手守護神が世代をけん引してきたのは間違いない。
そこに今年になって、下の世代から強力なライバルが現れた。2000年生まれで、昨年のU-17ワールドカップにも出場した谷晃生である。ユース卒業を前にしてガンバ大阪とプロ契約を結び、今季は同クラブのU-23チームの一員としてJ3の14試合に出場している期待の守護神だ。
今年3月のインドネシア遠征からU-19代表に加わった谷は、影山雅永監督からの信頼を獲得し、わずか半年で年上の2人からポジションを奪った。
「サコ(大迫)と(若原)智哉がいることはずっと知っていましたし、そこと争っていくとずっと自分でも感じていたので、すごくレベルが高い中でも、やっぱり年下だからというところを感じさせないようにしないと監督も使ってくれないだろうなと思っています。そういうところで自分がこのチームのリーダーとしてやっていくという意識を持ってやってきました」