ゲッツェがもたらすプランB
ゴール前で爆発的な得点力を発揮したわけではない。アルカセルとポジションは同じでも、フィニッシャーとしての貢献ではなかった。0トップならでは、前線を流動的に動いていく。
26分に一旦パスを受けてヤコブ・ブルン・ラーセンの中央突破を引き出したように、アトレティコのタイトな守備の中でも、着実にボールを引き受けた。ディエゴ・ゴディンのハードな当たりに潰されることもあったが、狭いスペースの中でも確実にボールをキープする本来の持ち味を、ほとんど取り戻していた。
また、38分のアクセル・ヴィツェルの先制点のシーンでは、ペナルティエリアの右側にポジションを取ってフィリペ・ルイスを釣り、シュートコースを開けようとしている。オフ・ザ・ボールでも効果的な動きを見せた。
こうして攻撃の潤滑油として機能したゲッツェは、守備時にはロイスと2トップを組んで、ファーストDFとしての役目をきっちりとこなした。プレッシングに精力的な様子からは、シーズンが始まったばかりの頃と比べれば、コンディションが格段に上がっていることは明らかだ。
83分の場面で、3点目に繋がるパスを自陣左サイドからハキミに出したのは、他でもないゲッツェ。コンダクターとしての一面も覗かせたことを考えれば、ロイスが務め続ける[9.5番]のポジションもこなせる可能性が膨らんだ。
アトレティコに4-0で大勝し、グループAで首位に立ったのは大きい。決勝トーナメント進出にかなり近づいたのはもちろんのこと、首位通過も見えてきた。そして何より、ゲッツェが輝きを取り戻しつつある。そのことによってドルトムントは、新たな戦術バリエーションを手に入れた。決勝トーナメント以降の戦いで行き詰まってしまうことがあったとしても、ゲッツェの0トップ起用は、“プランB”として重要な役割を果たすはずだ。
(文:本田千尋【ドイツ】)
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