豪州でどのような変貌を遂げるのか
その貢献度の高さにも関わらず一瞬の隙を突かれて2-1にひっくり返され、メルボルン・ビクトリーはダービーマッチで苦杯を舐めたが、ケビン・マスカット監督は「Outstanding(傑出していた)」という単語を会見で連発していた。
チームメイトのMFレイ・ブロクサムも「ケイスケは素晴らしいスタートを切った。いいゴールを奪ったし、他の選手たちのつなぎ役としてもよくやっていた。もっと試合をこなしてリーグが進んでいけば、フィジカル的にも相当良くなるんじゃないか」とポジティブな発言をしていて、チーム全体が「ケイスケ効果」に沸いている。
本人は「ゴールという結果以外で証明する」と言っていたが、やはり最初の一歩は得点と言う結果が雄弁である。それはメキシコでもそうだったし、加入後短期間でゴールを奪ったオランダ、ロシア時代にも言えることだ。
今回のオーストラリアでのデビュー戦は守備的な役割に回ったが、そういうMFがいざという状況でゴールを奪えるのは大きな強みになる。
チームを引っ張るにふさわしい能力を持ち合わせた選手だと一歩目から示したことは、必ずや今後につながる。本田は「攻守に1つひとつもっと細かいところにこだわらないと。攻撃の時に点を取ったらいいっていうザックリしたプレースタイルではいけない」と話している通り、緻密さと大胆さを兼ね備えたMFへと変貌を遂げていくつもりだ。
VVVフェンロとCSKAモスクワ時代にボランチ経験があるのも心強い部分。中盤で何をすればいいか感覚的に理解できるのは前進するうえでのプラス要素になる。もちろん当時と今ではサッカーの質が劇的に変化し、より運動量や縦への推進力がどのポジションにも求められるようになっているが、研究熱心な本田はそのことを誰よりもよく理解しているはず。
帝京大学との業務提携で走力強化のためのトレーナーを派遣してもらうなど、次々と新たな試みに取り組んでいる。その成果がどう出るかも含め、新天地・オーストラリアでの進化がが非常に楽しみだ。
(取材・文:元川悦子【メルボルン】)
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