試合の明暗分けたエースの出来
このシーンではミランの守備にも問題があった。ベシーノにボールが入った瞬間、対峙したアレッシオ・ロマニョーリは十分なプレスをかけることができなかった。また、ドンナルンマはクロスボールの憶測を誤り中途半端な飛び出しを行い、それが目に入り安心したのか、マテオ・ムサッキオも少しマークを緩めてしまった。
だが、なんといってもイカルディの集中力である。最後までゴールを狙い続ける姿勢と確実に得点を奪うそのシュートセンス。まさに本物のストライカーだ。前半からクロスやシュートのこぼれ球を押し込もうと誰よりも早くPA内で動き出していたのがこの背番号9だ。後半はほとんど目立つ場面がなかったが、ここぞという時に輝けるのがインテルの頼れる主将。ミランは最も仕事をさせてはいけない選手に、大仕事を与えてしまった。
殊勲の決勝弾を挙げたイカルディとは対照的に、イグアインはいい所なしといった印象だ。確かに、良いボールが背番号9の下へ来なかった点はある。ただ、フラストレーションが溜まりすぎたせいで、ゴールへの意慾は半減し、後半は足を止めるシーンも多かった。集中力が切れていた印象は否めず、セリエA屈指のストライカーといった風貌は、感じられない。
ミランに来てからはイライラを隠せない試合を送ることがほとんどだったが、ワンチャンスを生かし、何とか得点を奪ってきた。しかし、インテル相手にはそうはいかなかった。ただただ、ストレスを溜めるだけになってしまい、自らアクションを起こす気力すら、無くなってしまったのだ。
最後までゴールを狙い続けたイカルディ、ゴールへの意慾が半減していたイグアイン。両者のこうした違いが、明暗を分けたのかもしれない。今回のミラノダービーはアルゼンチン人エース対決にも注目が集まったが、“インテルの背番号9”が圧勝したとみて間違いないだろう。
(文:小澤祐作)
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