クラブ幹部が見逃さなかったその才能
ルカは不安感や不快感に満たされることも少なくなかった父と母の込み入った会話からも距離を置いて、コロヴァーレの駐車場で何時間もボールを蹴っていた。
何がしかの結晶が、現実に一つ以上は先立ってあったはずである。背の高くない家系に生まれたあの小さな少年は、ボールを追いかけるほかの子供たちと何か違うものを持っていた。なかなかに鍛えられた目をもってすれば、そのことに気づくために時間をかける必要はなかったはずだ。
〝バスケットの町〞と呼ばれる場所の主要なフットボールクラブ、NKザダール。その幹部であるヨシップ・バイロの耳に彼に関する知らせが届くまで、そう時間はかからなかった。
「駐車場で一日中プレーしている、ある子供のプレーを見に来てくれ」
そう聞かせるだけで、事足りた。バイロがその人生で初めてルカ・モドリッチを目撃し、自分の瞳に異様なものが映っていることを認めるためには。この町にやって来てから数カ月後、7歳になったばかりの少年は、公教育を受け始めるのと並行して、フットボールクラブのスクールに通うことになった。
ルカの性格は何年経っても親しい友人たちとしか理解し合えない内向的、閉鎖的なものにつくり上げられていたが、その一方で巨大な意思の強さと強烈な自尊心も培っていた。彼はこれから先、自分が持つ信念について、無数のインタビューの中で繰り返し言及していくことになる。
ルカはホテル・コロヴァーレで、家族の悲劇とは無関係のままに、友達やフットボールとともにあることで幸せそうだった。しかしながら、彼の幼年期のバックグラウンドは確かに、将来的に一流のスポーツマンとなる、ほかのどんな子供たちのものとも異なっていた。彼がスポーツ、そして人生から獲得した知見は、所有欲が強く、疑り深い個性を構築していったのだ。
(文:ビセンテ・アスピタルテ、ホセ・マヌエル・プエルタス/翻訳:江間慎一郎、再構成:編集部)
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