指揮官はさらに上のレベルを目指す
前半に圧倒されたジェノアは、後半を注意深く戦っていた。攻めに行って裏を使われた反省から、あえて最終ラインを下げてカウンター主体にした。ユーベを前に引き出してピョンテクとクアメを縦に走らせるやり方だが、彼らがボールを触り出すようになる。
これに対し、高い位置で相手を捕まえていたユーベの守備が甘くなった。67分のクアメのクロスのチャンスを作ったのは、ジェノアのCBダビデ・ビラスキの縦パス。前半であればプレスで許さなかったところだが、こういう小さなほころびからダメージが拡大した。
さらにユベントスがドウグラス・コスタにディバラ、ベルナルデスキを相次いで投入した後も、ユリッチ監督に的確に対応された。CBを一人投入し、3バックの右を務めていたビラスキをアウトサイドに張られ、ピッチを広く使うという目論見を絶たれた。中盤のパワーダウンも選手交代で手を打たれ、終盤には前線のキープ力に長けるゴラン・パンデフの投入で反撃の流れを切られた。
勝ち点1をもぎ取るために死力を尽くしてきた相手を、ねじ伏せることは出来なかった。今季初のドローという結果が何より明確に物語っているが、こうしたペースダウンは今季のユーベにとって初めてだったという印象だ。
「ユーベはやはりどこよりも強い」とユリッチ監督が語ったように、7連覇中の王者の力は突出している。1つのドローをスキャンダラスに捉えるべきではないのかもしれない。
だが、アッレグリ監督はさらに上のレベルを要求する。「軽々しい試合をしない」、つまりそれはプレーの激しさ、厳しさの持続。「CL制覇を目指す」と公言する指揮官にとって、目下の課題ということのようである。次のマンチェスター・U戦で、どんな修正が施されるのか注目だ。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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