別格の輝き。1試合で3億円の価値を示した
本田は鳴り物入りでメルボルン・ビクトリーに移籍した。チーム全体の合計年俸が210万豪ドル以下にしなければならないオーストラリア・Aリーグにおいて、その制限から外されるマーキー・プレイヤーとしての加入である。
年俸は360万豪ドル、約3億円である。チーム総年俸よりも多い金額をもらうことになる。当然、期待値は高く「スター選手」という扱いだ。活躍しなければ厳しい批判に晒される。
プレッシャーがかかる中で、本田はその価値を示したと言える。ゴールそのものはもちろんのこと、プレーの質でも他を圧倒していた。
メルボルン・ビクトリーの攻撃はお世辞にもスムーズとは言えない。前線のFWはボールが収まらず、決定力もない。トップ下のジェームス・トロイージは好選手だが、1人で局面を打開できるほどの能力はない。縦にパスを入れるとノッキングを起こし、意図の見えないパスでチャンスを潰す場面が多々あった。
ただ、本田がボールに絡んだ時は別だった。ボールロストがなく、味方に指示を出しながらパスを出すことで幾度となくチャンスを作り出していた。本田がタメを作れることで相手守備陣にギャップが生まれ、味方はエリア内での侵入やオーバーラップがしやすい。
現チームでこれができるのは本田だけ。ポジションが下がっても攻撃的センスは消えず、むしろ輝きを増していた。どう見てもメルボルン・ビクトリーは、本田なしには成り立たないチームだった。
他の選手の質はあるにせよ、高額年俸を払う価値があることをしっかりとプレーで見せたことになる。
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