失われていないゴールへの嗅覚
これが嗅覚というものなのか。
それまで控え目にプレーしているとさえ思えた本田圭佑が初めて前線に顔を出した。前半28分、本田が右サイドでドリブルを仕掛け前方にパス。ボールを受けた味方がエリア内の選手とパス交換している時に本田はエリア内に侵入する。オーバーラップしてきたSBのストーム・ルーがセンタリングを上げると、本田が頭で合わせ、メルボルン・ビクトリーが先制した。
新天地でのデビュー戦となったメルボルン・シティとのダービーマッチ。先発出場した本田は4-3-1-2の「3」の右インサイドハーフを任されていた。「新しいポジションでプレーすることになる」と語っていたとおり、これまで主戦場としてきたトップ下からは1列下がったことになる。
序盤は攻撃に絡む機会は多くなかった。常に味方にポジショニングの指示を出しており、まずはチームのバランスを崩さないようにしていた。明らかに本田は攻撃よりも守備を意識していた。
そうした中で、本田はゴールの匂いを嗅ぎ取り、前線に上がっていった。「結果を求めていくが、得点とは違う形の結果になるかもしれない」と話していたが、最もわかりやすいゴールという結果を出した。
本田はこれまでも重要な試合では得点を奪っていた。活躍を期待していた豪州のファンに、まずは一発回答で応えた。
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