最高のスタートを切ったが…
試合開始の1時間ほど前から大粒の雨が降り、彼方に雷鳴が轟く。何とも嫌な雰囲気が漂っていた。直前の試合は後半アディショナルタイムに劇的な同点ゴールが生まれた3-3の乱打戦。何かが起こりそうな気配があった。
インドネシアで開催中のAFC U-19選手権。グループBの初戦が19日に行われ、U-19日本代表がU-19朝鮮民主主義人民共和国代表(以下、北朝鮮)と対戦した。
スタジアムの屋根に撥ねる雨粒が周囲の音をかき消すほどの大雨は、試合開始からしばらくしてほぼ止んだ。天候が回復しつつある中、ピッチ上の日本の選手たちは気分も晴れやかになったか、序盤から「初戦の難しさ」を感じさせないプレーで北朝鮮のゴールに迫る。
そして8分、幸先良く先制に成功した。右サイドでボールを受けた久保建英が横へのドリブルで3人を引きつけ、それにともなってできた相手最終ラインのギャップにスルーパス。抜け出した斉藤光毅が一度はGKに阻まれながら、落ち着いてシュートをゴールネットに蹴り込んだ。
19分にはキャプテンマークを巻いた伊藤洋輝が「(左利きなので)左でしか狙えない距離」という、ゴールまで約30mから強烈なシュートをたたき込む。5バック気味に守りを固める北朝鮮に、圧倒的な力を見せつけたかに思えた。
しかし、日本はアジアの怖さを思い知らされることになる。伊藤が「2点を取って、みんなが安心してしまった部分というか、少し緩くなってきた部分での2失点だと思う」と語り、最終ラインで奮闘した菅原由勢も「チームに緩い雰囲気が流れてしまった時間帯」と反省した前半のラスト10分で北朝鮮に立て続けに2つのゴールを許してしまう。
1つ目は36分、プレッシャーをかけきれず左サイドを簡単に突破されてしまい、キ・タムの低いクロスボールはカットしようとした東俊希の足に当たってコースが変わる。これにはGK谷晃生も反応しきれなかった。
2つ目はさらに痛恨だった。40分、相手最終ラインからのロングボールに対し、センターバックの瀬古歩夢が体を入れきれず、キ・タムに入れ替わられてしまう。そしてペナルティエリアへの侵入を許したところで、手をかけてしまった。
北朝鮮はこれで得たPKを冷静に決め、前半のうちに追いつく。リ・チョル監督も試合後の記者会見で「守備的な選手を多く起用し、守りに集中しようとしていた。日本はパスもスピードもある。私は選手たちの前半のパフォーマンスに満足している。2-2まで持ち込んだんだ」と、日本対策の守備的戦術と前半の出来を評価していた。