成績不振も…。レーブ監督支持派も存在
多くのカウンター型のチームがそうであるように、敵にあえて引かれてボールを持たされると、主導権を握って崩すことができなくなってしまう。なまじカウンター・スタイルに舵を切ったため、中盤にコンダクターがクロース1人のドイツ代表。外側でボールを回せても、なかなか効果的にゴール前に入っていくことができず、行き詰まってしまった。
すると79分、フンメルスがブレーズ・マテュイディを倒したとされ、PKの判定が下される。映像を見返すと、実際には足は掛かっていない。だが、ネーションズリーグにビデオ判定はないのだ。ここはグリーズマンが冷静に決め切って、フランス代表が逆転。1-2のスコアで、レーブ監督は「本当の試合」を落とした。
ネーションズリーグ、10月の2連戦は痛恨の2連敗となった。順位はグループ1で最下位である。間近に迫るリーグBへの降格。次戦、オランダ代表がフランス代表に勝利すると、ドイツ代表は最終戦を待たずして、リーグBに転落する。
だが試合後、ドイツサッカー連盟(DFB)のラインハルト・グリンデル会長は、ポジティブなコメントを残した。
「チームとして、とても良いパフォーマンスだった。この若いチームが示したものは、将来に向けて自信を持てるものだ。それに基づいて(新しいチームを)築き上げることができる」
そもそも解任のムードを煽っていたのはドイツメディア。DFBは事態を静観し続けている。DFBのレーブ監督に対する信頼は、少なくとも表向きには、揺らいでいないようだ。また元ドイツ代表ローター・マテウス氏のように、レーブ監督を支持する識者もいる。マテウス氏は、ドイツ代表がサン・ドニで見せたスタイルを「ドイツが本来ある場所に戻るための未来のモデル」と考えた。改革に時間が必要であることに理解を示している。
11月は15日にロシア代表との親善試合を、19日にネーションズリーグの最終戦、対オランダ代表戦を控えているドイツ代表。レーブ監督は、限られたテストマッチで「未来のモデル」を発展させ、オランダ代表との最終戦を「乗り越えなければならない」。まだ現時点では味方がいる。だが、これ以上負けが込めば——。それまでの“擁護者”が一夜にして掌を返してもおかしくはない。それがフットボールの世界だ。
ヨハヒム・レーブ監督にとって、しばらく“首を賭けた試合”は続きそうだ。
(文:本田千尋【ドイツ】)
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