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ドイツはなぜ勝てないのか? ポゼッションを捨てた元王者、復調の鍵は「未来のモデル」の発展か

text by 本田千尋 photo by Getty Images

序盤はフランスを苦しめるも…

 もちろんレーブ監督が“トゥヘルの遺産”を活用した、と言い切ることはできない。不用意な形でボールを失って失点を招き、脆弱なポゼッションで大敗したチームが、格上との対戦に臨むのであれば、守備に重点を置いたカウンター・スタイルに舵を切るのは自然な流れと言えるだろう。レーブ監督も指摘するように、カウンターという点において、フランス代表はオランダ代表以上の破壊力を持っている。

 何よりロシアの地で、ドイツ代表は“世界王者”の称号を失った。オランダ代表戦が示したように、もはや世界中のどんな相手に対しても横綱相撲を取れるチームではなくなった。フランス代表を相手にポゼッション・スタイルで真っ向から勝負を挑むことは、自殺行為に等しかったと言えるだろう。

 レーブ監督のカウンター型は、ディディエ・デシャン率いるチームを相手にまずまずの威力を発揮した。13分、キミッヒが敵陣のセンターサークル付近でポール・ポグバからボールを奪うと、ニャブリとサネが爆発的なカウンターを仕掛ける。サネが右サイドから仕掛け、折り返したボールがプレスネル・キンペンベの手に当たってPKを獲得。前半の早い時間帯で巡ってきたチャンス。クロースが冷静に決める。先制点を奪う。

 その後もドイツ代表は5バックで手堅く守りながら、19分、30分とカウンターでフランス代表を強襲した。「勇気を持ってダイナミックに前に向かってプレーする」ヴェルナー、ニャブリ、サネ。

 しかし、どこか勢い任せの特攻は、フィニッシュに繋げる精度を欠いた。左ウイングバックのシュルツも加わって、ヴェルナーとのコンビネーションでサイドから仕掛けることもあったが、ゴール前でサネはチャンスを決め切れない。

 そうこうする内に、当初はダイナミックなカウンターに面食らっていたフランス代表も、だんだんと奇襲に慣れてきたようだ。62分、左からリュカ・エルナンデスに簡単にクロスを上げさせると、アントワーヌ・グリーズマンのヘディング弾で同点に追い付かれる。

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