驚異的な粘り強さを育むダルマチアの精神的な源とは?
前述したドラジェンの兄弟でありバスケットボール界のもう一人の伝説アッツォ・ペトロヴィッチの言葉によれば、ダルマチアの人々は「戦をするためのたくましい人間」であるという。人生が戦へ導くとき、もしくはスポーツに取り組むときに才能が現出し、勝利をつかませるのだと。
遺伝、風土、食事、地理、精神。史上最高の高跳び選手の一人であるブランカ・ヴラシッチは、ダルマチアの人々の精神を成り立たせる要因〝X〞となる、ほかの言語に当てはめることが困難な言葉の存在を明かす。
「ダルマチアではそれをディシュペットと呼んでいるのだけれど、翻訳は簡単じゃない。自分たちが行なっていることから、さらに一歩を踏み出させるポジティブな強情さ、という類の言葉。私の頭の中にはいつもそれがあって、ダルマチア人精神の模範ゴラン・イヴァニシェヴィッチのように戦っているわ」
驚異的な粘り強さを証明するのは、ヴラシッチ自身だ。彼女は高跳びよりも集団スポーツに好都合な環境の中、家族の助力もあって何もないところから五輪で2位にまで輝いたのだから。世界の準優勝者は、集団スポーツが優勢である理由にも言及している。
「ダルマチアの子供たちは、歩き始めたらボールをプレゼントされる。大抵はフットボールのものだけれど、何かしらのボールをね」
こうした要因に、スポーツを簡単に実践させることのできるシステムが結びつくと、時間の経過とともに感嘆すべき多種多様なスポーツ資源が生まれることになった。
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