勝つために磨きたい「想像力」
「駆け引きが足りない? それはやっぱり思うかな。1stレグで町田(浩樹)がウーゴ(・ヴィエイラ)にユニフォームか腕を引っ張られて、危うく失点というのもあったし、ああいうのなんてレフェリーに言ったら絶対とってくれるから。ああいう駆け引きを学んだり、やっていかなきゃいけない。
やっぱり『俺たちは勝ちにきた』と示すのは、俺はファーストプレーだと思う。ファーストプレーはホームでやった時も、ここでやった時も緩かったんじゃないかな。やっぱり相手を勢いに乗せてしまうと思うし、相手の得意なプレーかわからないけど、遠藤くんがくるっと回ってドリブルを仕掛けてきた、あれだけでもスタジアムは沸いたし、あれだけで相手に流れを掴まれた。そういうのをうちがやらなきゃいけないだろうし、アウェイではなおさらアグレッシブにいかなきゃいけないと思うし、もったいなかったですよね」
ロシアワールドカップで吉田麻也の相方を務めるなど貴重な経験を積んだ昌子は、Jリーグで賢く戦う「駆け引き」の拙さを痛感している。ベスト8進出をかけたベルギー戦の最終盤、あのカウンターからの失点に至るまでの10秒間は、昌子だけでなく経験した全員の脳裏に刻まれているだろう。だからこそ日本代表が日本サッカー界の先頭に立って「勝つための駆け引き」を実践して、「世界で勝つにはこれが必要なんだ」というのを見せていく必要がある。
もちろん若くて経験の浅い選手たちには難しい部分もあるだろう。サッカーは90分間の流れの中で状況判断が繰り返される。自分、味方、相手、ボール、雰囲気、スコア、時間帯、流れ、判定…そういった様々な要素を常に敏感に読み取り、次の局面で起こることを想像し、相手が嫌がることを選んで勝ち筋を見つけていく。その1つひとつの積み重ねが経験となり、精神的な強さや自信、試合運びの巧さにつながっていく。
幸運なことに日本代表の次なる相手は、強豪ウルグアイ。世界のトップクラスで戦う南米の選手から本物の勝利への駆け引きを学ぶ大きなチャンスだ。日本の最終ラインには長友や吉田、酒井宏樹といったワールドカップに出場した経験豊富な選手が起用されるだろう。その中で、次世代を担う若い選手たちにはファーストプレーから「ガツンと」ぶつかっていき、ウルグアイから「勝つための駆け引き」のヒントを得て成長のキッカケを掴んでもらいたい。その先に、一段階レベルの上がった日本サッカーの未来がある。
(取材・文:舩木渉)
【了】