「精神面でダメージを与えると、駆け引きや勝負は変わる」
彼らが年齢を重ねても第一線で戦い続けられた大きな要因の1つが、「駆け引き」に他ならない。経験に基づく彼らなりのやり方で、相手を自分のペースに引きずり込んでいく。長友が言うように「最初にガツンといく」ことで威圧するのも、あえて激しいタックルを見舞って怒らせるのも、自由自在な賢さがあった。
そうやって試合開始からあらゆる手を尽くして目の前の選手と駆け引きし、自分のペースに持ち込むことで、相手は知らず知らずのうちに本来の姿を見失っていく。例えばコルドバはセンターバックながら、身長は173cmしかない小柄な選手である。もちろん抜群のスピードという身体的な武器もあったが、35歳まで13シーズンにわたってインテルに欠かせない選手であり続けられたのは、相手FWに自由を与えない、ずる賢くしたたかな駆け引きがあってこそだ。
攻撃でも守備でも、したたかな駆け引きというのは大きな意味を持つ。同時に日本人選手に足りていない要素だと、長年言われ続けている。もちろんアウェイに乗り込んできて万全な状態ではないコスタリカやパナマが相手であれば、自分たちのやりたいサッカーを見せて勝負になるかもしれない。だが、来年1月のアジアカップ、さらにはワールドカップ予選、カタールワールドカップといった、世界との厳しい戦いは、何もが思い通りになる「ホーム」とは違う。
世界で勝ち抜いていくために、ピッチ上で相手よりも精神的に優位に立つことが肝心だと、長友は主張する。
「プレーだけじゃなく、精神的な部分も駆け引きというのがサッカーには大事。特に海外の選手になると『日本人はフィジカルが弱い』だとか、『小さい』だとか、上から目線で、正直最初は舐めているところがあると思うんですよ。そこでファーストプレーで『俺はここにいるぞ』というところを、精神面でダメージを与えると、駆け引きや勝負は変わってくる。そこは僕もイタリアとかでプレーしていたり、代表でプレーしていたりするんで、若手には伝えていきたい部分かなと思います」
日本代表は様々な大会で、よく「フェアプレー賞」を受賞する。イエローカードやレッドカードの枚数が少ないと獲得できる“名誉”だ。もちろん「フェア」に戦うことは重要で、相手を欺くようなプレーや怪我をさせるようなプレーをすべきではない。